仲介料が安い仕事
「俺にも賃貸仲介の仕事をさせてくれよ。暇ジャン」
と田中は言ってくるが、彼はうそつきなので信用できるわけがない。自分で案内いって、きめることができないくせいに適当なこと言う人間が多いことしょうがない。
「あなたはこの仲介料が安い仕事ができるんですか?売買をやったほうが良いですよ」
「まさか自分はゆすりですッて云う人ないと思うわよ」
「すると君は大川が眠ると部屋をでたんだね。そのとき鍵をかけずにでたわけだろう」
「あたりまえさ」
「不動産を沢山買い取って、販売したほうが良いもんな。賃貸なんて馬鹿のやる仕事ジャン」
「誰も泊ってる様子はなかったけどね」
「ところが隣室と同じようにフトンがしいてあったらしいのだがね」
「それじゃア今井さんかな。大川さんと今井さんはお揃いで東京から来て泊ることが多いんだがね。私はしかしゆすりの男が今井さんだったと云うつもりはないんだよ」
「大川は君に鬼女の面をつけさせてアンマをとるぐらいだから時々みだらな素振りを見せたかい」
「それぐらい用心深い人だから、そんなことしたことないにきまってるよ。そんなことまで尾ヒレをつけられちゃアこまるじゃないか。注意しておくれ」
「俺はヤクザでもなければ、良い人間でもない。この点だけを考えると、ヤクザなんてまったく怖くないんだよ」
彼は本当にばかな人間であった。